『衣服』の手引き!

手引き

レイヤリング

 レイヤリングとは、「異なる役割を持つ衣服を重ねることで、天候や運動量に合わせて体温調節を可能にする技術」のことです。レイヤリングは、一般的に下記の3層があります。

①ベースレイヤー(肌着)

肌に直接触れる「第2の皮膚」とも呼ばれる層です。
●最大の役割は、汗を素早く吸収・拡散させ、肌をドライに保つこと。ここが濡れたままだと、どんなに良いアウターを着ても「汗冷え」で急激に体温を奪われてしまいます。


②ミドルレイヤー(中間着)

●ベースとアウターの間に着る「保温のための断熱層」です。
●繊維の間にデッドエア(動かない空気)をたっぷり溜め込み、体温を逃がさない役割を担います。
●単に温めるだけでなく、ベースレイヤーから移動してきた汗(湿気)を、さらに外側のアウターへとスムーズに通過させる「通気性」も同時に求められます。

③アウターレイヤー(上着)

●一番外側で自然環境から身体を守る「盾(シェル)」となる層です。
雨、風、雪をシャットアウトし、ミドルレイヤーが蓄えた暖かい空気を外部に逃がさないことが最大の役割です。
●悪天候に対応する「防水・防風性」に加え、内側の湿気を外へ排出する「透湿性」を兼ね備えた素材を選ぶと、電車や店内での不快な蒸れを劇的に防ぐことができます。

レイヤ位置役割必要な機能代表的な素材主なアイテム
ベースレイヤー肌に一番近い層『肌着』●汗処理係
→肌を乾かす
●吸汗速乾性
→汗を吸ってすぐ乾く
●ポリエステル
●メリノウール
●ヒートテック
●コンプレッションインナー
ミドルレイヤー中間に着る層『保温着』●断熱材
→熱を蓄える
●保温性・通気性
→空気を溜め、湿気を通す
●フリースダウン
●化繊中綿ウール
●フリースジャケット
●インナーダウン
●セーター
アウターレイヤー一番外側の層『上着』●防護壁
→風雨を防ぐ
●防水・防風・透湿性
→水を弾き、蒸れを出す
●ナイロン
●ゴアテックス
●ポリエステル
●タフタ
●マウンテンパーカー●ダウンジャケット
●レインウェア

『ベースレイヤ(肌着)』
→肌をドライに保つ役割(ヒートテックなど)
『ミドルレイヤ(中間着)』
→断熱材の役割(インナージャケットなど)
『アウターレイヤー(上着)』
→風や雨から身体を守る役割(マウンテンパーカーなど)

構成要素

1つの衣服は主に以下の要素で構成されています。

表地
●衣服の一番外側に見える生地のことです。
●衣服の印象やデザイン、色を決定づける「顔」となる部分であり、雨風や紫外線などの外部環境から体を守る役割も担います。
耐久性撥水性などの機能が最も求められる部分でもあります。

裏地
衣服の内側、つまり着用者の体やインナーに触れる部分に付けられる生地です。
●主な役割は、摩擦を減らして着脱をスムーズにすること、着用時のシルエットを美しく保つこと、そして皮脂や汗から表地を守ることです。

中綿
●表地と裏地の間に挟み込まれる、保温材としての詰め物です。
●繊維の間に空気を溜め込むことで断熱層を作り、体温を逃さないようにする役割があります。
●冬のジャケットやコートなど、主に防寒性が求められる製品に使用され、衣服にボリューム柔らかさを与えます。

『表地』
→衣服の印象やデザインを決める(コットン、ナイロン、革など)
『裏地』
→衣服を快適に着用するため(キュプラ、ボア、メッシュなど)
『中綿』
→保温材の役割(ポリエステルやダウンなど)


「表地」の種類

見た目と耐久性を左右する「表地」は、多様な種類があります。
主な素材の特徴は、以下のとおりです。

系統種類特徴メリットデメリットイメージ
天然繊維系コットン(綿)ワタの種子毛から作られる植物繊維。
柔らかく親しみやすい肌触りが特徴。
●吸水性・吸湿性に優れる
●肌触りが良く、静電気が起きにくい
●熱に強く、アイロンがけしやすい
●縮みやすく、シワになりやすい
●乾きにくい
●長時間の濡れで強度が落ちる
ウール(羊毛)羊の毛から作られる動物繊維。
クリンプ(縮れ)があり、空気を多く含む。
●保温性が非常に高い
●吸湿・放湿性に優れ、蒸れにくい
●弾力性があり、型崩れしにくい
●水洗いで縮みやすい
●虫食いの被害に遭いやすい
●肌質によってはチクチクする
レザー(本革)動物の皮をなめして防腐処理を施したもの。
使い込むほどに風合いが変わる。
●耐久性・防風性が高い
●使い込むほど体に馴染む
●高級感がある
●水に弱く、シミやカビの原因になる
●定期的な手入れが必要
●重量がある
合成繊維系ナイロン石油を原料とするポリアミド系合成繊維。
摩耗に強く、非常に頑丈。
●摩擦や引っ張りに強く、
耐久性が高い
●軽量で乾きやすい
●弾力性がありシワになりにくい
●熱に弱い
●吸湿性が低く、蒸れやすい
●日光で黄変・劣化しやすい
ポリエステルペットボトルと同じ原料などで作られる最も一般的な合成繊維。●非常に丈夫で、日光や薬品にも強い
●速乾性が高く、カビや虫に強い
●シワになりにくく管理が楽
●静電気が起きやすい
●吸湿性が低いため、汚れを吸着しやすい
●毛玉ができやすい
ポリウレタン(PU)ゴムのように伸縮するプラスチック素材。
ストレッチ素材や合皮に使用される。
●伸縮性が非常に高い
●軽量でゴムより強度がある
●衝撃吸収性が高い
●経年劣化が避けられず、寿命が短い
●熱や水分、紫外線に弱い
ハイテク系ゴアテックス防水透湿性素材の代名詞。
水は通さず、水蒸気は通すメンブレンを持つ。
●極めて高い防水性と透湿性を両立
●防風性が高い
●悪天候下でも快適さを保てる
●価格が高価
●皮脂汚れなどで機能が低下する
●伸縮性はないものが多い
タスラン加工ナイロン糸に圧縮空気を吹き当てて結束させ、
コットンのような風合いを出した加工。
●ナイロンの強度を持ちながら、
柔らかな肌触り
●軽量で耐久性が高い
●撥水性を持たせやすい
●通常のナイロンよりコストがかかる
●機能性は高いが、光沢はない
コーデュラインビスタ社が開発した、
通常のナイロンの約7倍の強度を持つ高機能ナイロン。
●引き裂き・摩擦・摩耗に対して
圧倒的に強い
●軽量でありながら高強度
●質感のバリエーションが豊富
●硬めの質感のものが多い
●一般的なナイロンより価格が高め
●熱には弱い
60/40クロスコットン60%、ナイロン40%の混紡素材。
通称「ロクヨンクロス」。
●湿気を吸うと綿が膨張し、
防水・防風効果を発揮
●乾燥時は通気性が良い
●経年変化を楽しめる独特の風合い
●完全防水ではない
●やや重量がある
●火の粉に強い

用途に合わせた素材をチェック!

「裏地」の種類

「裏地」は着脱のしやすさと保温効率に影響し、肌触り、吸湿性、そして滑りの良さを左右します。「裏地」の主な素材の特徴は、以下のとおりです。

系統種類特徴メリットデメリットイメージ
滑り・着脱重視タフタ平織りの密度が高い織物。
ハリとコシがあり、独特のシャリ感がある。
(主にナイロンやポリエステル製)
●表面が滑らかで袖を通しやすい
●耐久性が高く、型崩れしにくい
●薄手で軽量
●動くと「シャカシャカ」という衣擦れ音がしやすい
●静電気が起きやすい
サテン朱子織で作られた、強い光沢と「とろみ」を持つ素材。●非常になめらかで滑りが良く、
着脱がスムーズ
●高級感のある美しい光沢
●肌触りが良い
●デリケートで引っかき傷ができやすい
●摩擦に弱く、耐久性は若干劣る
キュプラ(ベンベルグ)コットンの種の周りの産毛(リンター)を原料とした再生繊維。
高級裏地の代名詞。
●吸湿性・放湿性に優れる。
●静電気が起きにくい
●絹のようななめらかさと光沢がある
●表地のシルエットを崩さない
●水に濡れると強度が下がり、縮みやすい
●摩擦で擦り切れやすい
●合成繊維に比べて価格が高い
保温・質感重視フリースポリエステルなどの合成繊維を起毛させ、
空気の層を作った素材。
●軽量で保温性が高い
●速乾性があり、手入れが比較的容易
●肌触りが柔らかい
●摩擦が大きく、袖を通す際に滑りが悪い
●静電気が起きやすく、ホコリを吸着しやすい
●毛玉ができやすい
ボア羊の毛のように毛足を長くカールさせた、
もこもことした素材。
●保温性が非常に高い
●見た目にも暖かく、ボリューム感がある
●厚みが出るため着膨れしやすい
●毛足にゴミが絡まりやすい
●摩擦で毛が寝てしまうことがある
フランネル(ネル)表面を起毛させた、柔らかい織物。
チェック柄などが一般的。
●ふんわりとした温かみのある肌触り
●保温性が高い
●カジュアルな見た目
●摩擦が大きく、インナーとの滑りが悪い
●素材によっては洗濯で縮みやすい
起毛トリコット編み物(ニット)の表面を起毛させた素材。
スポーツウェアやウィンドブレーカーによく使われる。
●伸縮性があり、動きやすい
●肌触りが柔らかく暖かい
●シワになりにくい
●引っ掛けに弱く、糸が飛び出しやすい
●ニット構造のため、防風性は劣る
機能系メッシュ網目状に編まれた素材。
ポリエステル素材が主流。
●通気性が抜群で、汗をかいてもベタつきにくい
●非常に軽量で速乾性が高い
●スポーティーな印象を与える
●保温性はほとんどない
●網目に指や突起物が引っかかりやすい
●透けるため、表地との組み合わせに配慮が必要
アルミプリント加工裏地にアルミニウムの粉末やドットをプリントし、
体温を反射させる。
●薄手で軽量ながら、高い保温性を発揮する
●体温を反射して逃さないため、効率よく温まる
●蒸れやすい。
●金属的な見た目となる
●摩耗でプリントが剥がれる可能性がある

●肌ざわりを求めるなら。。。
タフタ(ナイロン・ポリエステル)、サテン、キュプラ
●保温性を求めるなら。。。
フリース、ボア、フランネル、起毛トリコット、アルミプリント
●通気性を求めるなら。。。
メッシュ

「中綿」の種類

アウターの「心臓部」であり、「中綿」の素材によって温かさや軽さが決まります。
主な「中綿」の種類は、以下のとおりです。

系統種類特徴メリットデメリットイメージ
天然素材ダウン(羽毛)水鳥の胸元に生えている、芯(軸)のないフワフワとした綿毛。●軽くて暖かい
●復元性が高い
●吸湿・放湿性に優れる。
●水濡れに弱い。
●濡れると保温性が著しく低下する
●家庭での洗濯が難しい。
●価格が高価
フェザー(羽根)水鳥の腹部などに生えている、硬い芯(軸)のある羽根。●弾力性と復元性が高い。
●ダウンに比べて通気性が良い
●安価で入手しやすい
●保温性はダウンに劣る
●芯があるため重みがある
●生地を突き破って飛び出しやすい
ウールわた羊毛をシート状やわた状に加工したもの。
昔ながらの防寒素材。
●吸湿発熱性が高い
●濡れても保温力が落ちにくい
●抗菌・消臭効果がある
●ダウンや高機能合繊に比べて重い
●家庭での洗濯が難しい場合が多く、
縮みやすい
●独特のにおいがある場合がある
合成・高機能わたポリエステルわた石油由来の繊維で作られた最も一般的な中綿
(通常の中空糸など)。
●価格が安く、製品コストを抑えられる
●濡れても乾きやすい
●カビや虫に強い
●洗濯機で洗えるものが多い
●ダウンと同じ暖かさを出すには、
厚みが必要で、嵩張る
●吸湿性が低く、蒸れやすい
●経年劣化でヘタリやすい
シンサレート(3M)「薄くて暖かい」をコンセプトに開発された、
マイクロファイバーなどを使用した高機能中綿。
●薄手でも断熱性が高く、着膨れしない。
●スマートなシルエットが作れる
●湿気を吸っても保温力が落ちにくい
●微細な繊維構造で防音・吸音効果もある
●ふんわりとしたボリューム感は低い
●詰め込みすぎると質感が硬くなりやすい
プリマロフト米軍の要請でダウンの代替素材として開発された、
超微細マイクロファイバー素材。
●ダウンに匹敵する軽さと柔らかさがある
●撥水性が高く、濡れても保温性を維持する
●家庭での洗濯が可能で速乾性がある
●ダウンよりはヘタリが早い
●一般的なポリエステル綿より価格が高い
コアブリッド(三菱ケミカル)芯鞘構造の導電性・光吸収発熱性アクリル繊維を含む中綿。●太陽光や赤外線を吸収して発熱する
「発熱効果」がある
●「静電気を抑制」する
●中空構造のため軽量で暖かい
●発熱機能は光が当たる環境などで効果を発揮するため、
使用シーンを選ぶ場合がある
●高機能素材のためコストがかかる
特殊系粒綿(ボール状)極細のポリエステル繊維などを丸めて、
ダウンボールのような球状(粒状)に加工したもの。
●高い保温性と復元力を持つ
●柔らかな着心地
●洗濯しても中綿が偏りにくく、乾きやすい
●ダウンに比べるとやや重量がある
●中で粒が移動して偏る可能性がある

●『中綿』にもいろんな種類がある。
軽くて、暖かいほど高価


「ダウン」と「フェザー」の比率

ダウンジャケットの品質表示タグを見ると、「ダウン90%・フェザー10%」といった表記がありこの比率が変わるだけで、「暖かさ」・「軽さ」・「値段」が大きく変わります。
「ダウンが暖かいなら、全部ダウンにすればいいのに」と思いませんか? 実は、ダウン100%の製品は非常に稀です。理由は主に2つあります。

完全に分けるのが難しい
機械で選別しても、どうしても小さなフェザーが混ざってしまうという製造上の限界もあります。

②型崩れを防ぐため
ダウンはフワフワすぎて、着ているうちにぺちゃんこになったり、片寄ったりしがちです。そこに「フェザー(芯)」を少し混ぜることで、クッションのような「復元力(元に戻る力)」を持たせています。

「ダウン」と「フェザー」の比率による違いは、以下のとおりです。

比率(ダウン:フェザー)保温性軽さ値段特徴
90:10高い




低い
軽い




重い
高い




安い
【本気の防寒・高級ライン】
●非常に軽くて暖かい。
●真冬の寒冷地や、登山などのアウトドアに最適。
●理想的な黄金比
80:20【街着のスタンダード】
●暖かさとコストのバランスが良い。
●普段使いのコートやジャケットなら十分快適に過ごせます。
70:30【安さ重視・ファッション重視】
●触ると少しガサガサしたり、
重量感があったりします。
●真冬の外歩きには少し寒いかもしれません。

●『ダウン:フェザー』の黄金比
90:10


FP(フィルパワー)値とは?

FP(フィルパワー)とは?
FPとは、一言で表すと「羽毛(ダウン)がどれだけ大きくふくらむかを表す数値」です。
数値が高い ⇒  同じ重さでも大きくふくらむ(空気をたくさん含む)。
数値が低い ⇒  同じ重さでもあまりふくらまない

なぜFPが高いと良いのか?

FPが高いことの最大のメリットは、「軽くて暖かい」ウェアが作れることです。
保温性が高い
⇒ダウンはそれ自体が発熱するのではなく、ふくらんで「空気の層」を作ることで体温を逃さないようにしています。FPが高いと、多くの空気を抱え込めるため、より暖かくなります。
軽い(軽量化できる)
⇒FPが高い羽毛は、少量でも大きくふくらみます。そのため、FPが低い羽毛と同じ暖かさを出すために必要な羽毛の量が少なくて済み、結果としてウェア全体を軽くすることができます。

一般的に、以下のような基準でランク付けされています。記事内でスペックを紹介する際の参考にしてください。

FP値品質特徴
500〜600未満一般的●リーズナブルなダウン製品によく使われます。
600〜700良質●アウトドアブランドの標準的なライン。十分暖かいです。
700以上高品質●高品質ダウンと呼べます。
●街着としてはオーバースペックなほど暖かいことも。
800〜1000超高品質●雪山登山など極地仕様。
●非常に軽量でコンパクトになります。

●FP(フィルパワー)・・・ダウンの膨らみやすさを示す数値
⇒FPが高いほど品質が良く、「温かさ」と「軽さ」を兼ね備えている。